現実と幻想のはざま(三改)

日々の中で色々刺激を受けて思ったことや感じたことなどを書いています。あと米津玄師の楽曲MVの解釈と考察など。

映画「藁の楯」の感想と考察2

今までに見た(数少ない)映画の中で、好きな映画の感想と考察を書いていっています。

 

今回は、気になった言葉から物語の核を掴んで?の解釈の観点から書いていっています。2013年頃に書いた記事のリブログです。

以下は、台詞と状況説明と、私がそこはこうなんではないかと思ったことをごちゃ混ぜにして書いています。

 

ネタバレは大前提です。

キャスト一覧 wikipediaよりーーーー
銘苅一基:大沢たかお
白岩篤子:松嶋菜々子
奥村武:岸谷五朗
関谷賢示:伊武雅刀
神箸正樹:永山絢斗


大木係長:本田博太郎
高峰警視正:伊吹剛

清丸国秀:藤原竜也
蜷川隆興:山崎努
以下略

ーーーーーー

 

私が気になった言葉は、物語の最後の方で清丸国秀が言った
「すっげぇ…」
って台詞でした。


場面的には、
大沢たかお演じる銘苅が無事とは言い難いけれど、
清丸を最後まで東京の警視庁まで連れてきた。

その時に清丸に孫娘を殺された蜷川隆興(山崎努)もその場に来ていて、
彼が条件を下げなければ、共に護衛してきた他のSPたちの死や
その他色々な事がありながらも、銘苅が清丸をここまで護送して来た意味がなくなる。

そのために、なんとか蜷川を説得して取り下げることを約束したその矢先に
清丸が蜷川に向かって刃物で斬り掛かり、その刃から蜷川を守り、銘苅が倒れた瞬間だった。

 

えっ?何でそこでその台詞なの?って思いました。素直に感嘆している、本当にそんな感じでした。

 

清丸にしてみれば、確かに、今まで自分を何だかんだ言って守って来たSPが、

自分という護衛対象に仲間のSP(松島奈々子)が殺されるのを目の当たりにして
激昂し暴力を振るいながらも、決して死なせたりしなかった銘苅が、

自分が誰かに(この場合元凶に)危害を加えようとするときにも、
護衛対象(清丸)を危険にさらさせないのは
(清丸を傷つけて止めるよりも蜷川をかばう方法を選択するという意味で)
確かに面白かったと思うんだけど、


どーもそれだけじゃない気がして、ずっと考えてたんですよね。

 


そもそも、
こーゆー清丸みたいな犯罪を次々犯すような人間の屑を一番殺したいのは誰なのか?
というのも映画では描かれていて、一人目の被害者の父親も出てきていて
10億円もらえるもらえない関わりなく、清丸を殺してやりたい内の一人だったりしています。

 


物語の後半で、SPが銘苅と白石の2人だけになって
それでも護送を続けて行くんですが、命を狙われ続けるうちになのか
段々清丸にも変化が出て来てくるんですよね。

人間らしい心を取り戻しつつあるのか、
どうせ死ぬのならSPのどちらかに殺してもらって、
自分の母親にそのお金を少し送ってやってくれないか、って言い出し始めたのでした。


しかし、その矢先にその母親が自殺したというニュースが流れて来た。
しかも清丸が犯した犯罪を苦にしての自殺だった。

それを聞いた清丸は泣き崩れた。
どんな犯罪者に成り果てても母親の事はどこかで気にしていたのだろうか。

 

泣き崩れる清丸を休ませるために車を停めてしばらく休憩する一行。
その僅かな隙をついて、清丸は白石(松嶋菜々子)が持っている銃を奪い、
彼女を撃ってしまう。

 

ここでの清丸の狙いは、もう何がなんでも自分みたいな“人間のクズ”は殺してもらうに限る、ということだったと思いました。白岩を殺したのも、そうすればいくら冷静沈着な銘苅でも激昂して自分を殺してくれるだろうというものだったと思いました。


対峙する二人。


「お前のことを命がけで守ろうとしたんだぞ?…何でだ…なんでこんなことを…」
「だって、この人、おばさん臭いんだもん・・・車の中も」


激昂して銘苅が清丸に殴り掛かる。

 

銘苅は、映画の時間の少し前に妻を亡くしていた。
悪質な飲酒運転を繰り返す常駐犯の交通事故で。

子供が生まれる何ヶ月か前だったため、
今は銘苅一人で弔いながら遺影の妻に向かって語りかける毎日を送っているのだった。

 


「死んだ奥さんはがっかりだろうなぁ…『ひとを守るのが、あなたの仕事でしょ』

あっはっはっは…(笑)」


護衛されている途中で清丸は聞いていた。
妻に言われた「その言葉だけが今のおれを支えてる・・・」と話していた事を。


「妻は、そんなこと言ってない」と銘苅は言った。

「病院じゃずっと意識を失ってた。妻はそんなこと一言も言ってない!」と。

 

「俺が心の中で勝手に創った物語だ。

「その小さな物語を信じなきゃ…俺は生きていくことが出来なかったんだよ!」

 

「仕事がなきゃ、俺はあいつ(妻を殺した運転手)を殺してた。

仕事じゃなきゃ、お前も真っ先に殺してたよ!」

 

「教えてやろうか!5人の中で1番お前を殺したかったのは、この俺だっ!」

 

その瞬間に清丸は気づいたんでしょう。
銘苅の中に、方向性は全くちがうけど自分と同じ、常軌を逸脱した狂気があるということに。
だから、たまらず笑い出したんだろうな、と思いました。

 


だから、クライマックスの警視庁のシーンで清丸が蜷川に向かって刃物で斬り掛かった時も
蜷川が元凶で命を狙われるはめになったから仕返し、という意味もあるだろうけど
それ以上に銘苅がどう動くのかを見たかったのかなって。

だから、あの場でとっさにその選択が出来ることに対して、
「すっげぇ…」って言ったのかなってそう思いました。

 

感想サイトか監督へのインタビューかなんかで読んだけど。
護送の途中で、SPたちとかかわり合うことで、清丸も変わって行く、って。

 


裁判で、死刑宣告された直後の清丸の最後の台詞も、
そういうふうに銘苅が銘苅の狂気に殉ずるなら、自分も自分の狂気に殉じようという思いからあーゆー台詞になったのかなって思いましたね。
すっごい始末が悪い思いですけど。

 

最後の台詞、掲載。
「後悔、反省しています…」

 

 

 

 

 

 

 

 


「どうせ死刑になるなら、もっとヤっておけばよかったかな、って・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから、誤解を恐れずに言うなら、この台詞は、銘苅が引き出したものだと言えると思いました。

更生させた訳ではないので、賛否両論はあるとは思いますけど…私はこの映画好きです。

自分自身が傍観者で、何も分かってない、ということも大前提ですが。

続く。